Goro-Sakamoto’s world

坂本吾郎(Goro)が語る。自分の考えをストックし、アウトプットしていきたい。でも考え方は変わるものなので、その時々の思考が常に最新とは限らない。

抑止力

「先輩、抑止力とは何ですか?一発うてばもう終わりでしょう。ならば核兵器5発も1000発も同じでは。たくさん持つことに何の意味があるというのでしょうか。」

 

それに対して先輩はこう答える。


「抑止力とは、一発でも撃ってみろ、報復として敵の戦力を徹底的に壊滅する兵器を我々は持っているぞ。そしてそれらかがどこにあるかはわからないだろうから、我々の戦力を無能力化することはできない。だからお前たちには先に撃つことはできないんだぞ、という状況を作ることです。だから、核兵器をたくさん、そしてどこにあるかわからないようにして持つことには一定の合理性がある。国際政治は理想だけでは回らないのです。」


「しかし先輩、私は、みんな持たなければいいのにと思うのです。世の中に、戦争を望み、まさかこ核兵器を本当に使おうという人がいるとは思えません。それとも、世の中は、ゲーム理論でいうところのナッシュ均衡にあり、パレート最適にはならないということでしょうか?あるいは、指導者が狂っていて、もう死んでもいいって思ったら、ボタン一つ押すくらいどーってことないというものなのでしょう。実際に核兵器を使えば世の中終わりだということは皆知っている。それなのに、軍縮だ、抑止力だ、と真剣に世界が議論している。なんだかそれって滑稽ではないですかね。いくら国際政治が経済、安全保障と複雑な思惑が絡まり合っているとしても、至ってシンプルに考えるべきではないですか?つまり、協力しないことよりも協力した方がお互いの利益になるという考え方を一斉にやるのです。これは弱者は侵略されるというリアリティを無視した議論でしょうか?」


「そうですね。」


「しかし先輩、最近の近隣国との関係を見ていると、政治が悪戯に国民の感情を刺激して関係悪化に拍車をかけているように見えるのです。つまり、民間交流や経済活動の延長にある二国間関係ではなくなって、安全保障問題が民間活動にもろに影響している。民主国家ではすぐに指導者が代わるので、トップ同士の好き嫌いとか主義主張に左右される国際関係って、常に危険と隣り合わせですし、これではそもそも、未来志向の関係って築けないのではないでしょうか?我々国民の関心は、今日明日のご飯、家族と未来の子供たちの幸せです。そのために何をすべきかということなんですよ。その考え方に立てば、隣国との関係悪化は選択肢にならないはずです。マスコミも変ですよね。集団的自衛権とか、どの国にも認められているものを、すぐに戦争したがっているだとか徴兵制だとかと結びつけてミスリードする。そして海外メディアは軍国主義の亡霊が復活しただとか言うんです。本当に意味不明です。リテラシーのない人はこういう情報で本当に日本に対してネガティブな印象を持ってしまうんですよ。中国は盛大に軍事パレードをやっているではないですか。なんであれは軍拡主義だ〜って日本の新聞は大騒ぎしないんですか?自衛権については、集団的がダメで個別的自衛権なら徴兵制にならないとか、あるいは戦争にならないという合理的な説明はあるというのですか?個別だって相手にその意思があれば戦争はいつだって成り立ちますよ。憲法に平和が謳われているから平和なんじゃない、戦争じゃないから平和に見えるだけなんです。官邸前のデモに参加してた人がテレビでこんなことを言っていました。『詳しくはよくわかんないんですけど、戦争に向かっていくのは嫌だなって思って、子どもたちを守るために参加しました。』って。詳しくわかんない?こういう人たちが世論だとか民主主義とかって言われてしまうのはおかしいでしょう。もちろん、間違いなくその発言者の考えは正しいと思いますよ。子供の幸せを願う気持ちを誰も否定できるはずがない。でもやっぱりずれているんです。まず、詳しく分かるまで勉強してこいとすら思います。感情だけで右や左と一斉に動くのは極めて危ないのではないでしょうか。」


先輩はこう続く。

「まず、外交にも戦争にも段階がある。私が君の意見が気に入らないからと言って、ここでいきなり君を殴るということにはならないのと一緒で、いきなり戦争になって、ましてや核兵器を使うということはない。それから、集団的自衛権がそれほど嫌なら、永世中立国になればいいという話です。我が国の領空を通過するなら、無条件に自国の武力でもって撃ち落とすと宣言するのに等しく、常に武装しておく必要があります。安保法制どころではなく、物凄く強烈なメッセージを持っているんですよ。ただし、自衛以外は戦争ができない、そこは日本と同じです。つまり、自国だけで自国を守るのであれば、それくらいの覚悟がいるということです。もちろん軍事費はかさみますよー。それを日本国民は望むのでしょうか?隣国も、我が国の存続をかけた安全保障問題に口を出すのなら、それこそ核武装も含めて検討しなければならないという理屈に行き着くのですが、それでよいのですか?官邸前のデモの参加者が本当に純粋な日本人かどうかは知りませんが、しかしそもそも、日本だけが平和主義をうたっているわけではなく、どこの国も侵略を正当化するような憲法などもっているはずがない。コーランだって、イスラム原理主義者の過激な行いを正当化するような経典ではないのです。」

 

 

「そうですね。やや物騒な話になってきました。ここは気を取り直して、ここらで葉巻でもふかしてお洒落に決め込みましょう。」


私は酒を飲んで政治の話をしてもろくなことにはならないと思い、話題を変えた。


「私はたばこの臭いは許せないが、葉巻の香りなら大丈夫だ。」

 

芋焼酎を好きな人は香りが好きというが、嫌いな人はあの匂いが嫌い、という表現をするらしいです。それと同じ感覚ですね、先輩。」

 

たわいもない会話を繰り返し、西新宿のお洒落な夜は更けていった。